共済と保険、いずれも運営する組合や会社数、そして主契約のみならず特約までいれたときの商品数の多さにヘキエキしてしまって、つい営業マンにすすめられるままに一番の売れ筋らしい商品をよく考えずに契約してしまう...といったケースは、決して珍しくありません。
いま仮に「おすすめの共済・おすすめの保険」を提示されたとして、「それはどういう点で、あなたにとっておすすめなのか?」を考えてみると、マジメに提案されたプランである限りは、「現時点のあなたの状況からスタートして、先々に実現する可能性が高いと見込まれるあなたのライフプラン」をもとに、設計されているはずです。
しかしいかに精緻な計画をたてようと、しょせんは「現時点からみて発生確率が高いと見込まれる推測」の域を出るものではありません。
この先のライフプランひとつをとってみても、今の会社で定年まで勤められそうか、それとも転職する可能性が高そうか、あるいは会社の倒産リスクが高そうか、またはリストラされる危険性が高そうか等々によって、収支計画の前提自体がガラッと変わってきます。
共働きの家庭か否か、奥様はパートをいつまで続けられそうか...などでも同じ問題が起きるでしょうし、将来の子供の進学はどこまで視野に入れるのか、親の介護は在宅介護か施設介護か...など、予期せぬかたちで大きな一時的出費が見込まれる出来事が起きる可能性もあります。
またこの先結婚して子供を設ける予定があるか、あるいは「おひとりさま」を前提に考えるかなど、自分の内面・価値観の変化ひとつで、たとえば自身の死亡保障の金額をいくらに設定するかも大きく異なってきます。
そうなると、時間をかけて立てた当初のライフプランを大きく見直さない限り、それが非現実的で実現不可能な計画に姿を変えてしまうまでに、そう時間はかかりません。
かつて終身雇用が社会的コンセンサスを得ていた時代には組み立てやすかった「中長期的ライフプランの設計」そのものが、低成長で不透明な景気の動向・社会構造や家族構成の変化・そして自身の収入見通しの不安定化などによって、すでに非常に設計しにくい時代になっているのです。
さて、厚生労働省が毎年作成している、いまの年齢から数えて平均してあと何年生きられるかという期待値などを生命関数を使って表した「簡易生命表」というものがあります。
日本人の平均余命(平成21年簡易生命表 厚生労働省)
平成21年簡易生命表によると、60歳までの男性の死亡率は8.9%、女性の死亡率は4.5%。
60歳までに男性が不幸にして亡くなる確率は、10人に1人もないわけです。
また同表の平均寿命にいたっては、男性79.59歳・女性86.44歳です。
ちなみにこの死亡率は、100歳以上を除けば男女とも年々改善される一方で、かつ平均寿命も男女ともに年々伸び続けています(ただし平成23年は東北大震災の影響により、前年から悪化しています)。
確率論でいくならば「万一」との言葉どおり、そうそう滅多に、自分の身に死に至る不幸なぞは起きるものではないのです。
したがって自分が「本来の寿命をまっとうできる、大多数のグループに属する」という前提にたって、「医療の入院や通院など、死亡保障以外の部分をきっちりカバーする」「保険や共済に頼らずに、貯金を厚くしたり投資による運用に力を入れる」というのも、十分にまっとうで、筋の通った考え方なわけです。
もちろん、まったく逆の考え方もあるでしょう。
たとえば2年ごとにライフプランや共済・保険の最適なカバーをその都度見直すことがまったく苦にならない、という方はいるでしょうし、そのような方はその時々の社会・金融情勢(インフレになりそうか、あるいはデフレ基調が続きそうかなど)もあわせてチェックして軌道修正をはかることもできるので、そのメリットはきわめて大きいという見方もできるはずです。
共済と保険、メリットとデメリットの本質を比較 でも述べたとおり、共済・保険共にそれなりのメリット・デメリットを有していることもあって、誰にでもおすすめできる商品というものはもはや無い、と考えておくべきでしょう。
確かなことは、「自分のケースをよく見つめもせず、最初にすすめられたプランに入った後は何年もほったらかし」ですむ時代は、とうの昔に終わっている...ということです。
先々の混迷が深まる今の時代、一人一人が自分の現在の人生・自分の価値観・自分なりに調べて考えた将来予測にもとづいて、手間を惜しまずに自分自身や家庭の保険や共済商品によるカバー体制を考えていくことが必要です。
それによって無駄な出費を抑え、本来使うべきだった教育費や医療費など他の必要分野に、節約した分を回すことができるようにもなるはずです。
共済は、加入しやすくお手軽・一律掛け金で一律保障・掛け金負担が手頃・万一の際の支払が比較的早いなど、共済ならではの数々のメリットを有しています。
だからといって共済だけに加入して考えるのを止めてしまうのではなく、機会をみて自らのライフプランを見直しながら、保険や貯蓄・他の金融商品などとうまく組み合わせたベストプランをつくりあげていく発想を、ぜひ持ちたいものですね。