共済には現時点で、保険会社のようないわゆる「セーフティ・ネット」が用意されていないことをご存じでしょうか。
保険の場合は、「保険契約者保護機構」という制度があり、契約した保険会社が万一破たんした場合などに、契約が一定の保護を受けられる仕組みが用意されています。
しかし現在の共済には、そのような仕組みがありません。
したがって、共済の安全性については加入前に調べておくべきですが、共済は上場企業などと比べて、入手できるディスクロージャー(情報開示)資料などが多くなく、自分で細かい点を調べるのがなかなか難しくなっています。
このような背景もあり、2008年4月には「全労済」「県民共済」「coop(コープ)共済」の根拠法となる「消費生活協同組合法(生協法)」が改正されました。これは、実に60年ぶりの改正です。
共済という点から生協法改正のポイントをみると、「組合員(契約者)保護の観点を重視し、共済事業者の経営の健全性・透明性をより充実させた」ことがあげられます。
改正生協法では、大規模事業者が以前に可能だった「共済と共済以外の事業の兼営」を禁じました。
また、法的な位置づけが無かった生協の理事会の権限を明示すると同時に、各種の責任準備金の積み立てや、経営情報の開示を義務づけています。
重要事項の説明やクーリングオフなど、共済に加入するときのルールの明示や、契約者保護のため万一の破綻の際の、契約の包括移転に関するルール整備なども、行われました。
さらに保険会社と同じく、経営の健全性をはかる指標となる「ソルベンシーマージン(支払い余力)比率」を導入し、その算出と開示を義務づけることとしました。
「ソルベンシーマージン比率」とは、大災害などリスクが顕在化した場合に支払いの余力がどれくらいあるかを示すもので、安全性の観点からは200%を下回らないようにするのが望ましい、とされます。
各社におけるソルベンシーマージン比率(支払余力比率)の実績(2014年度)は、coop(コープ)共済が1,385%、全労済が1,434.7%、JA共済が1,027.0%となっています。
ただし、保険会社でも使われているこのソルベンシーマージン比率は算出基準が統一されていないため、この指標だけに頼って安全性をはかったり、他の共済や保険会社のそれと比較したりするのは避けましょう。
さて、大量の資金が集まる大手共済は、加入者から集めた資金の運用をどのように行っているのでしょうか。
国内・世界経済ともに安定を欠く現在、株式や不動産・企業への貸付金などによる運用の割合が高いとしたなら、加入者としてやはり心配になりますよね。
しかし大手共済はいずれも資産の大半を「現預金」と「円建ての公社債」で保守的に運用しているため、その点を心配する必要はまずなさそうです。
また大手共済はいずれも一般企業への貸付を基本的に行っていないので、貸し付けた企業が倒産して焦げ付きが発生する、といった懸念もまずありません。
共済は基本的に利益を最大化する目的で設立されたものではないこと、また加入者の万一の病気や事故のときに払い出しを迅速に行うため、手元の流動性を厚くしておく必要性があることなどの理由から、どの共済も現預金を重視する資産構成になっています。
このように共済の安全性については、とくに大手共済では現時点で過度に心配する必要はなさそうですが、だからといって共済のリスクはゼロということにもなりません。
今後の懸念材料のひとつに、日本銀行が2016年2月から導入した「マイナス金利」があります。資産の大半を国債・公社債で運用する共済も他の金融機関と同じく、今後の資金運用や商品開発において新たな対応を迫られることになりそうです。
「一律保障・一律掛金」の共済では、社会の高齢化がさらに進んで加入者の平均年齢が上昇した場合、必然的に保障の支払額も膨らむことから、そのぶん新規契約を順調に増やさない限りは、経営の圧迫要因となっていきます。
共済間の競争も年々高まるなか、支払水準が高いままで新規契約増がはっきり伸び悩む共済も、今後は出てくるかもしれません。
その意味で「新規加入者の推移」は、今後は重視したいチェックポイントです。
また、大手共済のラインナップには「火災共済」が用意されていますが、もし巨大地震や大火災などがあったときは、その支払額も大きくふくらむはずです。
もちろん各共済とも、そのような大災害時に備え準備金を積む等の対応をしている旨表明していますが、一度に多くの金額支払いが生じる事態になったときは、そのことが経営基盤を確実に弱めるであろうこともまた確かです。
やはり加入者としては、共済の経営動向・決算の報告を定期的にきちんとチェックするようにしたいものです。